Discord を用いたワークショップに関するトライアルと考察

  • 2021年9月9日
  • 2021年9月14日
  • 報告

Discord において音声通話できるボイスチャンネルに入れる人数が無制限であることを知り,これまで Zoom と Discord を併用してワークショップを実施していましたが,Discord だけでワークショップできるかもしれないと考え,LearnWiz コミュニティの方々にご協力いただき,2021年9月7日に Discord に関するトライアルを行いました(ご協力いただいた方,誠にありがとうございました!).

トライアルの内容

トライアルでは,まず Zoom に集まってもらって,何かあったときのために Zoom は退室せず,Zoom と Discord 両方に入ってもらうようにしました.

トライアルでは以下のことを試しました.ここで,Discord のサーバーはブーストされていないものでした(= 無料の Discord サーバーを用いました).

Discord でも画面共有しながら,その様子を YouTube で配信できるか?

1人で視聴したり,1人でワークに取り組みたい人は Discord に参加しなくても良いので,利用しやすい YouTube で配信することでより参加を促せるのではないかと考え,Discord と YouTube の同時活用ができないかを試してみたいと思いました

具体的には,以下のような環境でトライアルをしました

  • YouTube には,OBS(Open Broadcast Software: 配信をするためのソフト)に顔映像と共有する画面を取り込んで,その映像を配信しました.ちなみに顔映像を取り込む際は XSplit VCam(Webカメラの背景を除去してくれるツール)を利用しました.この際,記録のため OBS の録画機能も使いました(これがミスだったのですが…).
  • Discord には,OBS に仮想カメラ機能があったため,仮想カメラを使って Discord のカメラに OBS の映像を流すことによって,顔映像 + 画面共有を実現しました.

Discord において音声トラブルを回避できるか?

入念なインストラクションの資料を用意して,マイク・スピーカーテストをしてもらい,音声トラブルがないように準備して,オンラインにおけるグループワークにおいて致命的になる音声トラブルを回避できるか確かめました.

Discord においてブレイクアウトが実現できるか?

独自ツールを作っており,それを用いると Discord においてブレイクアウトの機能を実現することができるようになります.それが上手く機能するかを検証しました.

具体的には,Discord の「メインルーム」というボイスチャンネルに全員入ってもらい,各グループでワークをしてもらいたいタイミングで,ツールに指示出しすれば各グループのボイスチャンネルに自動で移動してもらうようにしました.

利用した PC のスペック

利用した PC のスペックも簡易ですが載せておきます.

  • Let’s note CF-SV
    • CPU: Intel(R) Core(TM) i7-8565U @ 1.8GHz
    • メモリ: 8GB
    • OS: Windows 10 Pro

トライアルの結果

YouTube への配信は上手くいかなかった(OBS がフリーズした)

事象としては,OBS の映像が止まり,YouTube に配信および Discord で共有されていた映像が止まってしまい,機能しませんでした.

諸々と検討した結果,OBS の録画機能をオンにしていたことで,OBS の負荷が上がり,OBS の映像配信機能が停止してしまったようです.YouTube に配信することで,YouTube 側に動画は残るので,ローカルでわざわざ録画しなくてよかったと反省しています.

おそらく,OBS の仮想カメラ機能と YouTube への配信機能のみを用いることで OBS はフリーズせず利用できるかと思います.

Discord において仮想カメラの映像が荒くなり,文字の識別ができなくなった

映像の解像度が低く,文字が読めないレベルになってしまったため,このままでは利用できないと判断して,OBS の仮想カメラを利用するなど特殊なことをせず,Discord の画面共有機能を用いることにしました.

Discord の画面共有が上手くいかないことが多くあった

画面共有機能を使った場合でも,黒い画面でぐるぐるとマークが出て自分の画面が上手く表示されない状況が続きました.

私が以下のような対応を行っても改善されませんでした.

  • 解像度を 480p にする
  • FPS を最低の 15 にする
  • 切断して,再度接続する(一時的には良くなりますが,時間が経つと同じ状況になった模様です)

恐らく通信環境に依存した現象だとは思いますが,詳細な原因は現時点で特定できてはおりません.

画面共有が上手くいかないと,まともに進行できないのでこれはかなりクリティカルだと感じています(たとえサーバーをブーストしても,画面共有機能に関する特典としては共有できる画面の解像度が上がるということなので,問題の解決にはならないと感じています).

Discord のブレイクアウトは上手くいった

独自ツールを使って,メインルームのボイスチャンネルから各グループのボイスチャンネルに移動してもらい,さらに必要に応じてメインルームに戻ってきてもらうことはできました.

ただ,タイマーなどがないため,残り時間を気にしていないとグループワークの途中でメインルームに戻らされる感覚があるため,その点,改善の余地はありそうです.

Discord の音声トラブルは多い

このトライアルでは,iPad で入られていた方が,マイクが上手く機能しなくなってしまうことがありました.可能性として,Zoom と Discord 両方に入っていたことが原因として考えられるのですが,私の環境では再現できなかったため,本当の原因は不明な状態です.

また,このトライアルでは多くの方は問題なかったのですが,次の日に行ったワークショップでは多くの方が音声トラブルに陥ってしまい,オンラインにおいて大規模でアクティブラーニングする上では,かなり致命的な状況であることが後日わかりました.

結果をふまえた考察

Discord だけでワークショップするのは難しいだろう

上記の結果から,見出しの通りですが,Discord だけでワークショップするのは難しいだろうと考えています.

特に,画面共有が上手くいかないことは致命的で,これでは情報伝達が十分できません.

単発のワークショップにおいて Discord でグループワークするためには多くのサポートが必要

何回も授業を実施する場合は,音声トラブルを最初のうちに解決しておけば,安定的に Discord を利用できるかもしれませんが,単発のワークショップにおいてはその音声トラブルを十分にサポートする必要があることがわかりました.

ワークショップにおいてワークする人数が少ない場合は,まだ個別サポートできますが,大人数になったときにはかなり苦しい状況になると感じています.

授業での活用可能性はまだある

一つ前の項目で書いたことにも繋がりますが,授業だと単発ではなく,長期的に学生と関われるため,技術トラブルは初回でクリアして,それ以降は安定的に利用できることが期待できます.

そうすると,ブレイクアウトの機能を使うことでスムーズにグループワークができる可能性が高いです.現在ブレイクアウトを実現する独自ツールでは,グループの情報を保存しておいて,それを元にさらにグループを組み替えることも可能です(例えばワールドカフェやジグソー法を簡単に実現できますし,例えば小テストの点数を元にグループを再編成することも実現しようと思えば実現できます).そのため,グループ編成の自由度が非常に高まることから,授業での活用可能性はあるように感じています(ただ画面共有に問題があるので,Zoom との併用になると思いますが).

おわりに

思ったように上手くいかず残念でしたが,得られるものはとても多かったです.トライアルにご協力していただいた方,本当にありがとうございました!

これからもオンラインにおけるより良い学習環境を作るために活動していきたいと考えておりますため,引き続きどうぞよろしくお願いいたします.