2021年10月15日に第4回 授業ラボ「大学におけるMoodleを使用した非同期型オンライン中国語授業」を実施しました(開催の広報記事).
この記事では,その開催報告と振り返りを記します.
概要
「授業ラボ」では,実際に授業されている方にご登場いただき,その方の授業をより良くするにはどうすればよいのかを検討します.敬意を持って忌憚なく建設的に検討する場として,みなさまとより良い授業について考えていきます.
今回の授業は,Moodleを使用した非同期型(オンデマンド型)オンライン中国語授業でした.
1年次生向けの第二外国語の授業,文理混在クラス,必修と選択の学生が混在するクラスで,小テスト,課題,オンラインによる質問受け付けなどを通じてフィードバックをする工夫がされています.
また,懸念点として「オンデマンドのため学生同士の会話練習ができないこと」,また「教材の準備や課題のフィードバックのために労働時間が長くなることから継続性に問題あり」という点が挙げられました.
趣旨説明の後に,清原先生から授業実践に関する情報共有をいただき,参加者全員で授業の良いところ,より良くできるところを検討しました.
ワークについて,グループワークのみならず,個人でワークする環境を整えました.グループワークについては Zoom を用いて,個人ワークについては,独自に開発した LearnWiz One というツールを用いて実施しました.
資料(スライド・動画など)
アンケート
アンケート結果の一部をこちらに記載いたします.参加者27名中4名の方が回答してくださいました(グループワーク参加は6名).
ワークショップでワークを行いましたか?
- 1人でワークを行った 2名
- グループワークを行った 2名
- 視聴しているだけだった 0名
ワークショップ全体に関する評価をお願いいたします
- 非常良かった2名
- 良かった2名
- どちらともいえない0名
- 良くなかった0名
- 全く良くなかった0名
ワークショップの良かったところを教えてください
以下,全4件です.
- 回答者Aさん(複数行だったので以下のようにまとめています)
- 非同期型の授業の実践例を知ることができました。
- 清原先生の事前資料に貼ってあるリンクから、有用な情報を事前に得ることができました。
- グループワークの指示が明確で、自分の考えをまとめてから意見交換ができました(前回こちらが指示を聞いておらずブレイクアウトに飛んですぐ話し始めたのが原因だったとわかりました。振り返りで謝らせてしまい申し訳ありませんでした)。
- 自分の授業で「これがしたいけど、どうすればいいかわからない、できない」を解決するヒントが散りばめられた実践を共有させていただける点
- 授業設計がスッキリしているので、ロスがない。
- 参考になりました。授業提供ありがとうございました。頭が下がります。
ワークショップの改善できるところを教えてください
以下,全2件です.
- ブレイクアウトルームでホストが画面を共有している時、ルームの中の人は話している人一人しか顔が出ないんでしたっけ?もしそうなら、3人以上いるとちょっと話しにくいように感じました。
- LearnWizOneの改善点のランダムが見られなかったです。前に戻るや次へのボタンを押してもメッセージはありませんとなった。
授業実践のご共有から学べるところ
非常に多くの工夫が散りばめられた授業実践でした
今回ご共有いただいた実践には,以下のような多様な工夫が散りばめられていました.
- 単語学習を促す,音声付きオンライン単語カード(Quizlet)の活用
- Quizlet は学生はログインなしで利用できるオンライン単語カード(他の学習モードもあり)で,音声テストも可能です(単語カードを用いる学習に幅広く使えそうなツールである印象を覚えました)
- 文法学習を促す,教科書と既存のテキスト教材と補足の独自教材
- 教科書や既存のテキストを活用しつつも,不足していると思われる点を独自に動画や音声で教材を作成されており,豊富な教材が準備されていました
- 単語と文法の小テスト
- 毎週行っており,オンデマンド型授業で継続的に学んでもらう上で重要なペースメイキングの仕掛けにもなっているようにみえました
- 小テストの教員によるフォローアップ
- 小テストの結果を全体にフィードバックする対応をとられており,手厚いサポート体制になっていました
- 匿名アンケートによる質疑応答
- 更なる学びを促す参考資料の提供
より具体的には,是非動画をご覧いただければと思いますが,オンデマンド学習を促す上で非常に効果的な工夫が散りばめられており,私自身非常に勉強になりました.
非同期的な環境で,対話の練習をどう実現するか
個人的に非常に印象に残ったものをこちらで共有させていただきます.それは,非同期的な環境(リアルタイムではない環境)で,どのように対話の練習を実現するかに関するディスカッションでした.
その際,情報としてご共有いただいのは,FlipGrid でした.FlipGrid とは以下のようなサービスです.
- 動画の SNS(ソーシャルネットワークサービス)
- グループを作って,その中で撮影した動画を投稿できる
- 投稿された動画に対して動画で返信できる
このサービスを使うと,対話の練習を非同期の環境でも実現できるということでした(これを知らなかった私はどこかタイムスロットを用意して,そこで Zoom,Wonder,Gather など Web ミーティングできる環境で各々話してもらう,ぐらいの工夫しか思いつきませんでしたが,このサービスを使うと自然な形で非同期な対話が実現できる気がしています).
更には,音声を自動認識して字幕を生成してくれるため,正しい発音ができているかのチェックもできるということでした.
違う視点で,非同期に動画を用いた対話ができると何が嬉しいかというと,時差が関係なくなる点です.そのため,国際的な交流においても活用できるかもしれないと思いました.
このサービスの可能性をかなり強く感じましたので,振り返り記事でも共有させていただきました.
授業ラボに関する振り返り
運営が安定してきました
授業ラボが安定的に以下の構成で運用できるようになってきました(カッコ内の分数はおおよそです)
- 簡単なイントロ(5分)
- 授業紹介(15分)
- 授業検討ワーク(18分)
- 検討結果の共有(20分)
- おわりに(2分)
- (オプション)振り返り(30分)
1時間でも十分良いところを学べる構成になっているのではないかと思っています.
参加者をより多くするための工夫が必要
オンラインにおける大規模なアクティブラーニングを実現することもこの取り組みの一つの目標でもあり,授業ラボ自体の魅力をより高めて,より多くの方々に来ていただきたいと思っています.
現在,検討していることは以下のとおりです.
- YouTube Live でも配信を行い,より気軽に参加できる環境を提供する
- YouTube Live の利用でも聴講のみの参加と個人ワークの参加はできます.そのため,より気軽に参加できるであろう YouTube Live での配信も実施したいと思っています
- 授業ラボで出てきた知見をわかりやすい形でまとめる
- 授業ラボで出てきた汎用的な教授法や教育に関する知見(例えば Think Pair Share やガニェの9教授事象など)を記事としてまとめておくことで,本ホームページのことをより多く知ってもらって,それに伴い授業ラボや他のイベントに興味を持ってくださる方を増やしたいと思っています.
これからも積極的に活動していこうと思っています.
おわりに
ご参加いただいたみなさま,ありがとうございました.
また,授業をご共有いただいた清原先生,また参加してくださったみなさま,本当にありがとうございました!私自身も多くの学びを得られた本当に有意義な時間でした.
これからもより良い学びの環境を提供したいと思っておりますので,引き続きどうぞよろしくお願いいたします!