10/22 開催報告と振り返り 第5回 授業ラボ「日本語学校におけるオンデマンドとリアルタイムを組み合わせた授業」

  • 2021年10月26日
  • 2021年10月26日
  • 報告

2021年10月22日に第5回 授業ラボ「日本語学校におけるオンデマンドとリアルタイムを組み合わせた授業」を実施しました(開催の広報記事).

この記事では,その開催報告と振り返りを記します.

概要

「授業ラボ」では,実際に授業されている方にご登場いただき,その方の授業をより良くするにはどうすればよいのかを検討します.敬意を持って忌憚なく建設的に検討する場として,みなさまとより良い授業について考えていきます.

今回の授業は,日本語学校におけるオンデマンドとリアルタイムを組み合わせた授業でした.
懸念点として「反転授業の材料として効果的に使うための授業設計とビデオの内容改善が必要」「作り手(複数の教師が担当)によって個性があるため他の教師の動画を使いにくいことがある」「ビデオでは理解していないためリアルタイムの授業でやり直しになる」「学生が動画を見てくれない」などが挙げられていました.

趣旨説明の後に,先生から授業実践に関する情報共有をいただき,参加者含めて授業の良いところ,より良くできるところを検討しました.

ワークについて,グループワークのみならず,個人でワークする環境を整えました.グループワークについては Zoom を用いて,個人ワークについては,独自に開発した LearnWiz One というツールを用いて実施しました.
また,今回初めての取り組みとして,YouTube Live での配信にも挑戦しました.YouTube Live の参加者は,聴講もしくは個人ワークでの参加が可能です.

資料(スライド・動画など)

授業情報(検討メモ付き)

授業ラボの様子

振り返りの様子

ラボ内で出てきた授業の良かった点例

  • 文法ごとに短いビデオを作っておく方法は、学生の集中力も持つと思いますし、複数の授業・複数の年度で自由度の高い使い方ができそうで良いと思いました
  • 非常事態に「できない」ではなく、とにかくやってみる、そして実践を振り返り改善をしていく(学期ごとに改善をしている)という点が素晴らしいと思います。
  • 反転学習として、授業との連携を試みられている点
  • アンケートを取り,反映さえようとしているところ。
  • 学生のいう通り、動画を何度も見て理解を深められる点はとてもよいと思います。予習も復習も、学生が使いたいときに使えます。
  • ビデオを短くするという点。やはり、長いものは見ないのかな、と思います。
  • 改善案にもあるように授業との連携があるのはよいと思います。授業前に動画を見る動機付けになりますし、動画を見た時点での学生の理解度が分かると思います。
  • 複数の先生が違うやり方でビデオを作るのは、悪くないんじゃないかと思いました。学生によって何があうか、合わないかは違いますので。もちろん最低限のクオリティ管理は必要かと思いますが。
  • 生徒の理解度を反映させて,反転授業形式に変えてあげたこと。
  • 「〜ようにいう」という前回?までのターゲットをうまく復習につなげながら新しいことを導入している
  • 発音が明瞭、速度をかえることもできる設定になっている
  • 使役の3つの分け方と積み上げ方に無理がない
  • 学習者の反応をよく見て次の学期に反映させようとしている(問題点についての解決方法もすでに考えられており、言及されていた)
  • 例文が多かったこと。
  • 動詞の格変化?の並びが読みやすいかった。
  • 改善して動画を反転授業に変更したこと。
  • 動画を短くしたのは、長い動画を見る習慣がない今の若者にとっていいと思います。

ラボ内で出てきた授業のより良くできる点例

  • 動画にクイズを入れると良いのではないかと思いました。たとえばEdpuzzleとか、最近ではscreencastifyを使えば簡単にクイズを入れられそうです。
  • 自分の授業でしていたことですが、反転学習の際は、動画視聴のあとに簡単なクイズを入れたり(パワーポイントの昔あった機能/グーグルフォームなどで)、内容について質問または内容のまとめコメントを書かせたりすることで、きちんと理解したのか振り返らせていました。わりと効果があったと思います。
  • 確認テストがあったら,どれだけ理解しているのか生徒自身にも教員にもメリットがあると思います。形成的評価。
  • 動画視聴後に戻ってきて、などの情報はアイコンなど分かりやすく表示するとN4レベルの人でも理解でき野ではないかと思いました。
  • 例として示す状況は「お母さんと赤ちゃん」よりも、学生さんたちにとってより身近な日常的な例を用いる。例えば、今やっているアルバイトとか。
  • VTRは6から10分位の長さに。
  • 事前のビデオだけでの完全理解は難しいので,1~10まで全て詰め込む内容にすることはしないこと。
  • 学生がその構文を使う必要にかられる場面設定が先に来た方がよいのでは?「こんな場面だったらどう言う?」という課題。
  • 動画内のイラスト提示のタイミング(おかあさんが子供を学校にいかせる、先輩が後輩をはしらせる を一緒に提示されると、こわい先生がいるから学校にいきたがらない子供を… と考えてしまう)?
  • 動画をあらかじめみておくインセンティブがあったらよかったのでは(きいてあなうめとか)(しえきけいをたくさんきかせて活用規則の類推とか)
  • 使役の用法、(強制 指示 放任 許可 放置 介護 給仕 自責 原因 誘発)とあると思いますが・・・教え方以前の問題ですが、強制を例題にするとその意味内容が難しいと思いました。
  • すでに言及されていましたが、動画を文型ごとの短いものにするとさらに使いやすくなると思います。
  • 対面授業では、導入場面でも学習者とのやり取りで進め、学習者の反応に合わせて教える側もペースや内容、提示方法を臨機応変に調節していくと思います。動画だとそれができないので、動画の自主学習教材とZoomに戻ってきてからの学習活動との連携(動画の学習がZoomでの学習活動にどう結び付けられるかの動機付け、目的化)がやはり重要だと思います。
  • 反転動画の理解度を測るためにクイズをいくつか作るといいのでは。最近はクイズを作成するアプリもいろいろありますし、作ってしまえば毎年使えます

アンケート

アンケート結果の一部をこちらに記載いたします.参加者25名(Zoom 25名 + YouTube Live 18名)中10名の方が回答してくださいました(グループワーク参加は10名).

どのプラットフォームから授業ラボに参加しましたか?

  • Zoom 8名
  • YouTube Live 2名

ワークショップでワークを行いましたか?

  • 1人でワークを行った 4名
  • グループワークを行った 6名
  • 視聴しているだけだった 0名

ワークショップ全体に関する評価をお願いいたします

  • 非常良かった5名
  • 良かった4名
  • どちらともいえない1名
  • 良くなかった0名
  • 全く良くなかった0名

ワークショップの良かったところを教えてください

以下,全9件です.

  • 発表者が、インタラクティブに意欲的で改善意欲が高かったところ。多様性を認めた上でファシリテーションをされる吉田先生の姿勢。
  • 意見を書くツールがとてもよかったです。
  • 参加形態のフレキシブルさ。週末の夕方で疲れていたので、参加をギリギリまで迷っていましたが、無事に参加できました。Learn wiz oneも使いやすくとても良かったです。
  • オンライン授業をよりよくする方策について授業例をもとに具体的に検討できた。項目を区切って短いビデオを見せるほうが効果的だと分かった。前後にクイズを入れることなど改善案も知ることができた。
  • 1時間という時間がちょうどよかったです(長すぎず、短すぎず)。かつ盛りだくさんで、あっという間に感じました。ほかの方がされている授業について話を聞くことで、自分自身の授業についても振り返ることができた点。
  • グループワーク2回目だったので、私自身も落ち着いて参加できたので、とてもよかったです。グループワークならではのいろいろな意見が聞けて、個人参加もよいですが、やはり自分にはない視点を直接得られるということでとても有益な時間でした。
  • 今回は反転授業を具体的に考える材料が得られた点。Learn with Oneを使ったファシリテーションが大変参考になりました。
  • 授業の構成を客観的に考える機会になり,自分の授業にも活かされる機会でした。
  • 課題と解決方法を考えやすい構成になっているので、「人のふりを見て」自分自身を振り返ることができた

ワークショップの改善できるところを教えてください

以下,全6件です.

  • 参加者Aの方からのコメント(複数行だったため以下にまとめます)
    • グループワークよりも個人ワークでの参加の方が、自分自身の考えをまとめやすいかもしれないと思いました(かつ、ほかの人の意見も聞ける)。授業ラボには初めての参加でしたが、次回は個人ワークで参加をしてみたいと思います。
    • 全体的に少しペースがはやかったように思いました。
  • より改善できる点として、グループワークでもいい意見がいろいろ出たが、それらをすばやくまとめて入力するには時間が足りなかった。もう後15分くらい時間が延長できたらいいと思った。あと15分くらいあれば、今日は全参加者が21人だったので、全グループに意見をまとめて言ってもらうこともできたように思う。
  • 私自身がこの運営方法を理解できるようになったので、1時間を緩急つけて受講できるようになったことが改善できていると思います(子どもの相手とか、家事育児でどうしても邪魔されてしまうけれども、ワークの15分前後だけ我慢させたら(使役!)よいということでグループワーク参加のハードルがとても下がりました)。
  • (ラボの改善点ではありませんが)盛りだくさん過ぎて、いろいろ取り入れたいと思いながら、なかなか消化できない点。
  • 改善を重ねられて進化しているのがわかります。特に改善して欲しいところは見当たりません,いまのところ。
  • 書記になることができるスキルのある人とそうでない人に格差がでてきている

授業実践のご共有から学べるところ

動画は短く区切り,全体像を提示する動画も作る

動画は短くするのがおすすめで,トピックごとに分けておくと再利用可能性が高まります.Guo ら (2014) の大規模公開オンライン講座(MOOCs)の約700万の視聴行動を分析した研究によると,動画の長さが6~9分ぐらいから急に見られなくなってしまうことが示されています.そのことからも,動画を短くするのは重要だと言えそうです(もちろん内容などによる場合もありますが).

Guo, P. J., Kim, J., & Rubin, R. (2014). How video production affects student engagement: An empirical study of MOOC videos. In Proceedings of the first ACM conference on Learning@ scale conference (pp. 41-50).

また,トピックごとに分けて動画を作ると,全体像がわかりにくく,学生が知識の構造を捉えにくくなってしまう可能性もあることから,トピックの関係性がわかるような全体像を把握できる動画の作成も重要かと感じました.

動画を見るインセンティブを設ける(反転授業のゴールデンルール)

参加者の方からもコメントありましたが,動画を見るインセンティブを設けるのも重要かと感じました.

そのヒントとなる反転授業に関する文献として,英語なのですが Flipped Classroom Field Guide がおすすめです.
反転授業のゴールデンルールだったり,良い実践例が集約されていまして,非常に参考になります.
以下,当該文献に記載されているゴールデンルールのポイントを記載いたします.

  • 授業内で,小テストや問題解決などのアクティブラーニングの活動を行い,その中で授業外で学んだ内容を,ただ単に繰り返すのではなく,活用してもらうようにする
  • 学生がリアルタイムでフィードバックを受けられるようにする
  • 授業外の学習と授業内の活動への参加に対して,無視できない程度の割合の成績をつけることに意味はある
  • 授業内の学習活動・環境を,十分構造化して計画する

授業ラボに関する振り返り

YouTube Live も上手く配信でき,LearnWiz One との相性も良さそうでした

YouTube Live での配信は初めてでしたが,特に問題なく進行できました.更に YouTube Live で視聴されていた方も LearnWiz One を利用できているようでした.リアルタイムのコメントとして,以下のものがありました.

  • 今日使ったonelearnwiz?は一般公開されていますか?とても使い勝手が良いと思いました。

このコメントを見たときに,LearnWiz One の可能性をより感じました.これからは YouTube Live も組み合わせてイベントを実施したいと思っています.

LearnWiz One にグループモードの実装をする必要性を感じています

現在,グループワークは完全に旧来の方法を用いて,意見を収集しています.そうすると,アンケート結果にもありましたが,意見がうまく集約できず,共有もうまくいかない状況が生まれています.どちらかというと個人ワークに参加された方のほうが他者の意見を知るという点では優れている可能性すらあるかと感じています.

そのため,今後は LearnWiz One にグループワークできるモードも実装することで,上手くグループワークの意見を集約できる場を設けたいと考えています.

おわりに

ご参加いただいたみなさま,ありがとうございました.
また,授業をご共有いただいた宮本先生,また参加してくださったみなさま,本当にありがとうございました!私自身も多くの学びを得られた本当に有意義な時間でした.
これからもより良い学びの環境を提供したいと思っておりますので,引き続きどうぞよろしくお願いいたします!