2021年10月1日に第2回 授業ラボ「小学校での算数」を実施しました(開催の広報記事).
この記事では,その開催報告と振り返りを記します.
概要
「授業ラボ」では,実際に授業されている方にご登場いただき,その方の授業をより良くするにはどうすればよいのかを検討します.敬意を持って忌憚なく建設的に検討する場として,みなさまとより良い授業について考えていきます.
今回の授業は,小学校1年生の算数の授業で,3つの数の計算を行う1コマ(45分)の授業例をご共有いただきました.
趣旨説明の後に,大川先生から授業実践に関する発表をいただき,参加者全員で授業の良いところ,より良くできるところを検討しました.
ワークについて,グループワークのみならず,個人でワークする環境を整えました.グループワークについては Zoom を用いて,個人ワークについては,独自に開発した LearnWiz One というツールを用いて実施しました.
実施にあたっては,東京大学文学部3年生 中條麟太郎さんにもご協力をいただきました.ありがとうございました.
資料(スライド・動画など)
アンケート
アンケート結果の一部をこちらに記載いたします.参加者26名中10名の方が回答してくださいました.
ワークショップでワークを行いましたか?
- 1人でワークを行った 3名
- グループワークを行った 2名
- 視聴しているだけだった 5名
ワークショップ全体に関する評価をお願いいたします
- 非常良かった5名
- 良かった5名
- どちらともいえない0名
- 良くなかった0名
- 全く良くなかった0名
ワークショップで良かったところを教えてください
以下,全9件から抜粋です.
- 気楽に参加できること、時間帯がとてもいいこと
- 他の先生方のお話が聞けたところが良かったです。
- 合理的な考え方など自分が思ってもみなかった意見を聞くことができ、非常に楽しく参加することができた。
- ジャンルの違う先生方から的確なアイディアなどをいただけてとってもいいと思います。
- 小学校の教育が「お約束」によって成り立っていることを知ることができました。ありがとうございました。
- ・事前にレジュメが読め、疑問に思った点はラボ内で吉田先生が訊いてくださって(初等教育はよくわからず、的外れな質問かも…と自分では訊けなかったと思います)、第一回目と比較しても非常に時間配分が効率的でした。
・グループワークと個人ワークの時間合わせが緻密に計算されていてすごかったです。
・個人ワークは、各タスクの説明、時間配分がしっかりしており、特にトランジションに余裕を持たせてあったおかげで、今回は最初の作業を終わらせようとして新たな指示を聞きもらすことがありませんでした。
・CIがまた進化していた!上位いくつかだけ表示になり、集中しやすいですね。(吉田注: CI は LearnWiz One のことを指されています) - 教員の悩みを直に出せる機会は、いいですね。学校では、なかなか出せませんからね
- 率直な意見でのディスカッションが校種に関係なく行われていたのが良かった
ワークショップで改善の余地があるところを教えてください
以下,全7件を掲載します(いつもは「特になし」などのコメントは掲載していないのですが,今回はほぼそれに近いコメントが大多数だったので掲載しています).
- 開催が夜なのであまり参加できないことと、もう少し長い時間だともっとディスカッションできるように思いました。
- 無いですね、心地よい学びの場です。
- 現状、特にございません。
- 快適に受講できたため、思い付かない。
- 深掘りができたので、素晴らしかったと思います。
- 特にございません。
- 特にないです(初等教育事情に疎かったため、振り返りでも積極的に意見が出せませんでしたが、今回は私と同じように、へえ〜と思いつつ学んだ人が多かったのでは。こういう一見アクティブに見えないのもアクティブラーニングですね)
振り返り
最高の回になりました
私自身も学びの深い大変有意義な回になりました.このような良い回になったのは様々な要因が考えられ,それを振り返ることで次にも活かせると思っていますので,まとめておきたいと思います.ここで,授業ラボの第1回における振り返りと似た設計である文章ラボの第1回の振り返りをふまえて,大幅に設計を変えたことも功を奏したと考えておりますので,それについても含めて良かった点を以下にまとめます.その中から特に考察したいところを詳しく記述していきます.
- 専門性の高い参加者の先生が有意義なコメントをご共有してくださった
- ラボの最初の方の説明をコンパクトにして,検討に多く時間を割けるようにした
- 授業情報を Google ドキュメントにまとめて,それを用いて発表してもらった
- グループワークと1人ワークのプロセスを完全に分離させることで,グループワークの方々にはグループワークに時間をかけてもらえるような設計にした
- ラボ終了後に30分間ほどの振り返りの時間を設けた
専門性の高い参加者の先生が有意義なコメントをご共有くださった
参加者の中には,小学校の算数について深い知見をお持ちの先生方がいらっしゃいました.その先生方が活発にコメントくださったことで多くの学びが得られました.
例えば,以下のような知見は専門性があるからこそ指摘していただけるものかと思っています
- 3つの数の計算は,今後学ぶ2桁の計算の足がかりになっている
- 左から計算していくという式の基本を理解するための土台となっている
詳しくは録画を見ていただければと思いますが,1時間としては非常に濃密な議論が行われました.また,振り返りの時間の学びも深かったです.
また,今回コメントをくださった先生方がちょうど同じグループで議論されていたようです.私としては,そのようにグループで議論された結果,全体での議論がより活発になった可能性もあると考えており,グループワークの重要性を再度強く感じています.
授業情報を Google ドキュメントにまとめて,それを用いて発表してもらった
第1回授業ラボの反省をふまえて,授業情報を Google ドキュメントにまとめるようにしました.また,それを用いて発表してもらい,補足が必要な点はラボ中に伺って加筆する体制を整えました.
最初の基本説明は実践共有してくださった先生にお願いをしたのですが,授業案については今回は分量が多かったことから,吉田が重要となるところを説明しながら,適宜不明点を先生にお伺いして進めるという設計にしました.
そのような設計・体制を整えたこともあり,15分ほどの短い時間で授業案に関する情報はコンパクトかつ豊富に提供できたのではないかと考えています.
グループワークと1人ワークを完全に分離させた
第1回文章ラボでは,グループワークと1人ワークを途中まで同じプロセスにして,途中で分けるという設計にしていました.そうしたところ,グループワークの時間が短すぎるというコメントを多くいただき,グループワークに時間を十分書けるためには,グループワークと1人ワークを完全に分離させる必要がある考えました.そこで,今回は以下のような設計としました.
- グループワーク
- (個人) 良かった点・より良くできそうな点を考える (3分)
- (グループ) 簡単に自己紹介して,良かった点・より良くできそうな点 + 可能ならば改善案を検討 (12分)
- 個人ワーク
- 良かった点を LearnWiz One に投稿 (3分)
- より良くできそうな点 + 可能ならば改善案を LearnWiz One に投稿 (4分)
- LearnWiz One で他者の良かった点に関する投稿を確認 (2分)
- LearnWiz One で他者のより良くできそうな点 + 改善案に関する投稿を確認 (6分)
このように完全分離することで,グループワークの方々には,12分間グループで話してもらえる時間を設けることができました.
また,Zoom のブレイクアウトルームに対して,メインルームから画面共有を行って,グループでの議論に移行する時間も伝えられたこと良かったと思います.
ラボ終了後に30分間ほどの振り返りの時間を設けた
1時間だと授業実践の検討に全ての時間を割かざるを得ないのですが,やはり振り返りの時間がほしいと思っていました.そこで,30分ほどラボ終了後に希望者で残って,振り返ることにしました.そこでの議論も深く,有意義なものになりました.
コンパクトにラボは1時間で終わらせる,ただもっと話したい人もいるので終了後に振り返りの時間を設けるという設計も良かったと感じています.
1時間が良い,もっと話したいといった時間や,グループワークしたい,1人でワークしたい,聴講したいといった参加形式など様々な点で多様なニーズがあるため,大規模でワークショップを実施する場合には,そのような多様なニーズに応えられるような設計にすることが重要なのではないかと感じています.
おわりに
ご参加いただいたみなさま,ありがとうございました.
また,授業をご共有いただいた大川先生,活発にコメントくださった先生方,また参加してくださったみなさま,本当にありがとうございました!私自身も多くの学びを得られた本当に有意義な時間でした.
これからもより良い学びの環境を提供したいと思っておりますので,引き続きどうぞよろしくお願いいたします!