もともと文献管理のために Mendeley や Notion を使っていたのですが、ところどころ使いにくいなと思っていました。そこで、新たな文献管理ソフトを検討していたところ、世界的にユーザー数の多い Zotero を導入してみました。
結論を言うと、これ以上ないんじゃないか、というぐらい素晴らしいソフトで導入してよかったと思っています。
ありがたいことに来年度から2名の修士学生が研究室に入ってくるので、知見を共有する目的でも Zotero の良いところ、微妙なところなどをまとめておきます。
Zotero の良いところ
なんといっても軽い
本当に多くのメリットがあるのですが、なんといっても軽くてサクサク動くのが素晴らしいです。導入前まで pdf ファイルを読むときは Adobe Acrobat だったのですが、結構もっさり動くことに不満を持っていました。
Zotero は違います。
信じられないぐらいサクサク動き、スクロールもとてもしやすいです。これだけで論文を読む心地よさが3割増しぐらいになります。
しかも、pdf へのマーキングやメモもクラウドに保存されるので、スマホも含めてどの端末からでも操作できるのも良いところです。
ブラウザ拡張も軽くて優秀
Zotero Connector というブラウザ拡張機能があり、それを使うと Web ページから文献情報や PDF ファイル(アクセスできれば)をインポートしてくれます。
この機能ならば、Mendeley にもあるのですが、Zotero Connector はスマートにインポートしてくれます。
Medenley Web Importer は、拡張機能のボタンを押した後、読み込みに少し時間がかかり、追加するためには更にボタンを押さなければいけませんでした(もしかしたらもっと良い設定があったのかもしれません)。
一方、Zotero Connector は、拡張機能のボタンを押しただけで、スッとインポートが始まり、気づいたら PDF ファイルまでインポートしてくれるのです(優秀すぎる)。たかがワンクリック、されどワンクリック、ユーザー体験が全然違います。
文献情報に対して複数のメモをマークダウン形式で書ける
文献について考えたことを一元管理する意味でも、文献情報にメモを付与できるのが素晴らしいです(PDF ファイルにメモを付けるという機能ではなく(それもありますが)、文献情報そのものにメモを複数付与できるのです)。
さらに、そのメモはマークダウン形式で書けます。そのため、箇条書きも書きやすいですし、Notion で書いたものをコピペするのも非常にスムーズです。
いつこのメモを使うのか、ということなのですが、この文献のみに関するまとめや考察のメモを転記するために使っています。
自分は、あるトピックに関する一連の論文を読むときに Notion 側でメモを作りながら、各文献のまとめや考察、複数の文献にまたがる考察などを書いています。Zotero の場合、複数の論文にまたがるメモを作りにくいので、思考を整理するためには Notion のような他のツールが自分にとっては有用です。
ただ、各文献のまとめや考察については、その論文を他の人が読むときに参考になると思うので、その情報を Zotero 側にも保存したいというニーズがあり、Zotero はそのニーズにバッチリ応えてくれます。
一つの文献情報を複数のフォルダ(コレクション)に入れられる
当たり前といえば当たり前なんですが、文献情報を管理するためのフォルダ(コレクション)を複数作って、一つの文献情報を入れた際、コピーが作られません。
つまり、ある文献情報が複数のフォルダに入いっても、どこかのフォルダ内でその文献情報を更新したら、他のフォルダに入っている文献情報にも影響が出ます(文献情報が一元管理されているということです)。
ただ、重複して文献情報を入れてしまっている場合は、その限りでないので、メニューの「重複アイテム」から重複しているアイテムを統合しましょう。
グループ管理されたファイルの容量の負担がホストのみ(=教員がお金を払えば学生は無料で使える)
クラウドにて無料で管理できる容量は 300MB と大きくはないのですが、文献情報をグループで管理する際に 300MB を超えた場合、その分のお金を払わないといけないのは、グループのオーナーのみです(参照: Zoteroの料金ページ)。
つまり、例えば教員がグループのオーナーになっておけば、教員がお金を払うだけで全員が使える容量がアップするのです。ファイル容量無制限のプランであっても、年間120ドルなので安いもんです。ユーザー数に比例しないのが素晴らしすぎます。
痒いところに手が届くプラグインがある
後ほど詳しく紹介しますが、Notion 連携や自動翻訳など痒いところに手が届くプラグインがあるのが素晴らしいです。
Zotero の残念なところ
PDF ファイルからの文献情報読み込みがうまくいかないことがある
一点、Zotero の残念なところは、PDF ファイルをアプリにドラッグアンドドロップして入れたときに、うまく文献情報を設定してくれないときがあることです。
そのため、うまくいかなったときは、Web ページから文献情報をインポートして、重複したデータを統合すれば解決します。
ここが少し残念なところですが、それ以外は特に大きく気になるところがありません(すごい)。
Zotero のおすすめプラグイン
Zotero が更に便利になるプラグインをいくつか紹介します。
Zotero PDF Translate
自動翻訳を助けてくれるプラグインです。
Webページ: https://github.com/windingwind/zotero-pdf-translate
アブストラクトを翻訳してくれたり、論文の本文を選択することで該当箇所を翻訳してくれたりと便利です。
注意点として、デフォルトでは Google 翻訳なので、精度の高い DeepL にする場合は別途設定が必要です。
設定方法などは、Web記事「Zotero + DeepLで英語論文の日本語訳を自動化するまでの流れ」などをご参考にしてください。
Notero
Notion のデータベースに文献情報を自動で追加してくれるプラグインです。
Webページ: https://github.com/dvanoni/notero
自分の場合、思考や検討は Notion で行っています。論文などを参照したいときに、Notion 側にもデータベースがあるとよいのですが、Notero があるおかげで Notion 側でも Zetoro に入っている文献情報がすぐに参照できます。
Notero の注意ポイントなどをここにまとめておきます。
- 相互に同期されるわけではない(データの追加は Zotero から Notion への一方向)
- 一番重要な注意点はここで、Notion でデータをいじったとしても、Zotero 側には反映されません(残念)
- Zotero のメモ、添付資料は共有されない
- 本当はメモも同期されて、Notion でメモを編集したら Zotero 側のメモも同期されるとかだったら最高なのですが、そこまではいかないようです
- また、添付資料も共有されないため、PDF や資料を見たいときは Zotero にアクセスする必要があります
- Zotero で文献情報を更新したら、Notion 側も更新される(ページ URL は変わらず)
- Zotero における Notion に関する情報は、各文献の添付資料として「Notion」が作成されており、そこに Notion の情報が入っている
- ある文献情報を Notion と同期したくなくなったら、その文献情報の中にある「Notion」ファイルを消せば OK です
以上です。
Zotero おすすめなので、是非使ってみてください。
それでは良い Zotero ライフを!