教育で使えるプロンプトの一般化に関する試み

社会的なインパクトの大きい ChatGPT は、プロンプト(指示出し)によって出力が変わるというこれまでにない性質を持っていることから、どのようなプロンプトを作るのかが肝になってきます。

教育で使えるプロンプトを試したり、考えていたりして、これはかなり汎用的な思考法なのではないか? と感じたので、ここにその思考法と実例を記述します。ここで利用しているモデルは全て GPT-4 です。

プロンプトの構成要素

まず、プロンプトの構成要素について検討することにします。
https://www.promptingguide.ai/introduction/elements を参考にして、構成要素としては、以下のように「タスク」「文脈」「入力データ」「出力形式」が挙げられます(表現は吉田なりにアレンジしています)。

意味あるタスクを ChatGPT にしてもらうためには、特に「タスク」と「文脈」の書き方が重要だと考えています。「入力データ」も重要なファクターになる場合もありますが、今回の記事では扱わないことにします。

「一般的な文脈」と「一般的なタスク」で出力してもらう

あまり考えずに「タスク」と「文脈」を書くと、一般的な回答しか得られず、そこまで ChatGPT の恩恵にあずかれません。

具体例として、「プログラミングの授業で使える課題を作って」と投げかけてみましょう。

アイデアを出してくれる時点でありがたいですが、かなり一般的であり、少し考えたら出てくるレベル、少し検索したら出てくるレベルであること否めません。

ここで、ChatGPT 使えないなと思ってしまうともったいないです。

「具体的な文脈」と「一般的なタスク」で出力してもらう

もう少し具体的な文脈を付け加えて、一般的なタスクで出力してもらいましょう。

具体的には、「プログラミングの授業で for 文を学ぶ場面で使える課題を作って」と聞いてみましょう。

どれも一般的な演習問題で、少し味気がありません。

「具体的な文脈」と「具体的なタスク」で出力してもらう

そこで、次は「具体的な文脈」に加えて、「具体的なタスク」を指定して、出力してもらいましょう。ただ、どのように具体的なタスクを書けばよいか、頑張って考えないといけません。

そこで、提案したいのは、具体的なタスクを明示する際に、教育の知見を活用することです。具体例があった方がわかりやすいと思うので、「Bloom のタクソノミー(教育目標分類)」を例に挙げて説明します。

Bloom のタクソノミーとは教育目標を分類するための枠組み(Bloom & Krathwohl 1956)で、認知的領域の分類が最も有名です。認知的領域の分類は知識や思考に関連する学習目標で、低次なものから高次なものまで「知識」「理解」「応用」「分析」「統合」「評価」と6つのカテゴリがあります。例えば、「知識」の学習目標は例えば「~~を知っている」といった表現で、知っているか知っていないかに関わる低次な学習目標です。一方、「評価」の学習目標は、例えば「複数の提案について、どの案が最も良いか理由ともに述べることができる」など、高次な認知機能に関わる学習目標です。このように学習目標を分類することで、その棲み分けが明確になり、評価や学習活動を設計する際に参考になります。

そこで、この Bloom のタクソノミーにおける「評価」目標に対応するような課題を作ってもらうことにしましょう。

かなり「尖った」回答が返ってきました。せっかくならばコードも出してもらいましょう。

かなりいい感じです。というか、あの一行だけで、ここまでアウトプットを返してくれるんですね。

複数のコードを見せて、どのコードが良いのかを検討することは、実際にプログラムを作ったあとで重要になってくる保守や改善の視点を持つことを促す点で意義深いです。

正直、自分自身 for 文でここまで学びを促せそうな課題をすぐに思いつく自信はありません。といいますか、元々 for 文では大した出力は出ないだろうと思っていましたが、すごい質の回答を返してくれたので驚きました。

「具体的なタスク」を考えるときは、教育の知見を活かそう

具体的な文脈は自分の授業の文脈を必要に応じて細かく指定できるので良いのですが、具体的なタスクを作るのが難しかったところ、一例ではありますが、具体的なタスクを考えるときに教育の知見を活用したら「尖った」回答が出てきました。

この知見を活用すると、アクティブラーニングを導入したい場合、例えば具体的なアクティブラーニング技法の名前(例えば Think Pair Share)をタスクに含めてあげることで、「尖った」回答が得られそうです(例: 統計における検定のp値に関する理解を深めるために Think Pair Share を使う方法を教えてください)。

今回の内容はあくまでもアイデア段階のものであり、改善の余地があるかもしれませんが、試す価値はあると思っているので今後タイミングをみて探索的なワークショップを実施したいと考えています。

参考文献

  • Bloom, B. S., & Krathwohl, D. R. (1956). Taxonomy of educational objectives; the classification of educational goals by a committee of college and university examiners. Handbook I: Cognitive Domain. New York, NY; Longmans, Green.

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