ご入学おめでとうございます!
これからの新しい大学生活をぜひ満喫してもらいたいと思います。
私自身、2006年に東京大学理科一類に入学したのですが、特に目的意識なしに入ってしまって、今思うともったいない時間の過ごし方を多くしていたなという後悔が強くあります。そこで、新しく入ってくる学生には同じ思いをしてもらいたくないと考え、もし今の自分ならばどう学部1年生から過ごすだろうかという観点でこの記事を書いています。
バイトをするな
私自身、大学入りたての頃はあまり何も考えず個別指導塾でのバイトに明け暮れていました。もちろん教えることは好きで、好きなことをやって対価をもらえるのは良いなと考えてバイトしていたのですが、今振り返るともったいないなと思っています。
というのも、お金を稼ぐ手段はいくらでもあるため、やるにしても自分にとって学びの大きなバイトをするのが良かったと思っていますし、お金を稼ぐ必要がなければ他にもいっぱいやれることがあったと感じています。そのため、見出しとしては「バイトをするな」ですが、もう少し補足すると、視野を広げず時間をお金に変えるのが主になってしまうバイトはしないでほしい、というのが自分の思いです(見出しが少し言葉強めになってしまいすみませんが、インパクト重視にしてしまいました)。
ただ、お金を稼ぐ手段はいくらでもあるとかお金を稼がない場合に他にもやれることがある、と抽象的に言われてもわからないと思うので、具体的な例も交えながら説明していきます。
お金を稼ぐ選択肢は数多くある
東大生だと家庭教師や個人指導塾などがお金を稼ぐ選択肢に出てきやすいと思います。もちろん好きでバイトするのは良いので否定はしませんが、もっと視野を広く持ってもらいたいとも思っています。具体的には、以下のようなお金の稼ぎ方だってあります。
- 企業で学生インターンとして働く
- 様々な会社が学生インターンという形で、学生が働く機会を提供しています。実態が単純作業や雑用のものであれば魅力は少ないですが、例えばコンサルのお手伝いができたり、プログラミングを学びながらシステムを開発したり、データ分析ができたり、と自分の将来や今後やりたいことに関係があるインターンは探せばあります。そのため、自分が何に興味を持っているか、自分は今後何をやりたいかを考えて、それに関連するインターンを探して応募するのが、お金も稼げますし、自分が将来やりたいことにもつながるという点でおすすめです。
- 大学で働く
- 実は大学で働く機会も多く存在しています。オンキャンパスジョブという形で仕事が提供されていたり、研究室のインターンとして働くこともできます。意外と学内にも働く機会はあるので、是非色々と調べてみてください。
- オンキャンパスジョブとしては、例えば、技術的な支援や迅速なトラブル解決を行う「コモンサポーター」というサポーター制度があったりします。過去の募集なので今後同様の募集が発生しない可能性もあるのであくまでも参考ということにはなりますが、2021Aセメスター時の募集要項のリンクを掲載します。
- 研究室のインターンは、全ての研究室が募集しているものではなく、必要に応じて研究室が募集しているものになります。謝金をもらいながら研究活動のお手伝いができるもので、自分の興味に合いそうな研究室のホームページなどを覗いて、そのような募集がないかを確認したり、そのような情報は公開されていないことも多いので、研究室の先生や研究室に入っている先輩に直接アプローチしたりするのも手です(直接アプローチする場合は、相手も忙しいのでちゃんと事前調査をして研究に対する自分の興味なども明確にした上で連絡することをおすすめします)。研究室のインターンについて参考になる記事が東京大学新聞から出ていたので、そのリンクを掲載します。
- 業務委託を受ける
- 企業などから業務委託を受けるという選択肢もあったりします。業務委託とは、要求された仕事に対して報酬を受け取るものなので、〆切はありますが自分の好きな時間に作業ができます。
- 例えば、プログラミング能力を活かしてシステム開発を受注することが挙げられます。私自身、プログラミングを学んで、ある程度のシステムが作れるようになった段階で、あるデータを元にWebページ(html)を自動生成する簡易なシステムを開発したのですが、数十万いただいたこともありました(しかも元々近いものを開発していたことがあったのでかなり短い時間で完成させることができました。今思うとシステム開発で数十万は安いのでもっと高くても良かったかもしれません)。今自分がやるのであれば、CrowdWorks だったり、Lancers だったりと業務委託を受けやすい環境が整っているので、それらのサイトを使って簡単なものから引き受けて経験を積んでいくかなと思います。
- ただ、もちろんそれ相当の責任も伴いますし、安請け合いは NG です。自分の力量に見合ったものを選んで、経験値をためていってもらえれば安全です。また、稼ぎすぎたら扶養から外れたり、確定申告しないといけなくなったりするので、稼ぐ額についても自分なりに検討しておいた方が良いです。
上記のもの以外にも、まだまだ稼ぐ方法はあるかと思いますが、イメージを付けてもらうために3つほどカテゴリを作って紹介してみました。ここで、重要なのは、自分の今後にとって役立つことをしながらお金を得ることもできるので、今あなたが検討しているバイトやインターンなどが、自分にとってどれだけ意義あるものなのか、今後の役に立つのか、他にも方法はないかなど考えて、より良い時間の使い方をしてほしいということです。
お金を稼がなくて良いならばもっと選択肢は広がる
見出しの通りになってしまいますが、お金を稼がなくても良いならば活動の幅は更に広がります。友達の家でダベるのも、授業に出ないのも一つの過ごし方かもしれませんが、せっかくならば時間を有効活用してもらいたいです(私は教養学部の頃、友達の家で夜通しゲームをし続けて自堕落な生活をしてしまったこともあり、あれはあれで面白い思い出ではあるのですが、それだけではなく、もっと他の有意義なことにも時間を使えたなと後悔しています)。
- 友達とプロジェクトを始めてみる
- 共通の問題意識を持った友達と一緒にプロジェクトを始めるのは良いなと感じています。例えば、私の場合だったら「教育をより良くしたい」と思ったときに、教育に関する授業をとって、そこで友達を作って、意気投合した友達がいれば、一緒に何ができるのかを考えて、実際に行動に移してみるのも一つの手だなと感じています。
- もちろん遊んで息抜きするのも大事だとは思うので、絶対に遊ぶな!というわけでは全くないのですが、もっと有意義なことにも時間を割ける環境にあるので、是非時間の有効活用をしてもらいたいと思っています。プロジェクトを進める上では、後で紹介する東大のプログラムなども活用できますので、学ぶ機会を主体的に取りに行ってもらえると、より充実した学生生活になるだろうと思っています。
- 研究室のゼミ・イベント・プロジェクトに参加してみる
- 意外と知られていないのですが、研究室によってはかなりオープンに学生を受け入れているところがあります。そのため、自分の興味がある研究室を調べて、その研究室の取組として参加できるところがないかを確認するのはおすすめです。場合によっては、そのような募集の情報が載っていなかったとしても、事前に先生について調べて、希望を明確にして直接連絡すれば、答えてくれる先生もいらっしゃるかもしれません。せっかく大学に入ったのですから、研究室の先生がやっていることを覗いてみたり、実際に参画することで学生同士では得られない学びが得られます。
- 起業する
- 今の時代であれば学生のうちに起業するのは本当に一つの有用な選択肢になってきています。まず第1に環境が整ってきています。Startup Genome の 2021 年の Global Startup Ecosystem Report において、世界中の都市を対象にしたスタートアップの環境に関するランキングで東京が第9位にランクインしています。また、東大も起業に対してサポート体制が充実してきており、後述する Spring Founders Program といったプロジェクトを進める環境が用意されていたり、授業としてもアントレプレナーシップ道場やアントレプレナーシップ・サマー・ブートキャンプなど起業について学べる機会が多く提供されています。
- 一見、起業はハードル高いかもしれませんが、自分なりに課題を見つけて、それに対して試行錯誤しながらアプローチするという姿勢や行動は、どんな分野にいったとしても役立つので、実際に起業しない場合でもアントレプレナーシップ(起業家精神)を学ぶことは本当におすすめです。いきなりは難しいよと思う場合であっても、授業を少し覗いてみたり、現在はオンラインでも多くの情報が手に入るのでチェックしてみてもらえると良いと思います。
- また、学生のうちに起業して失敗したとしても失うものはほとんどないと感じています。失うものがあるとすれば時間ぐらいで、起業を経験したこと自体が評価されることの方が多いです。学生のうちの起業は無敵だなと今は強く思っています。
- (少し余談)結果的にはお金を稼ぐことになるかもしれませんが、失敗することも多いため、敢えてお金を稼がない側のカテゴリで紹介しています。ただ、実際に起業が上手くいって、会社を売却だったり上場させることがなどができれば、バイトでは到底手に入らないほどのお金を手に入れられるかもしれません。ただ、私としては、自分が課題だと思っていることに対して起業というアプローチで解決してみてほしいと思っているところもあり、お金儲けを第一目的にしてほしくはないなと思っていたりします(もちろんお金持ちになると見える世界が変わって社会貢献について考え始めるという話もよく聞くので、一概に否定できないのですが)。そのため、このカテゴリでの紹介にしています。
まだまだお金を稼がないならばできることはあると思いますが、ここでもまたイメージをつけてもらうために例を3つほど挙げて説明してみました。他の選択肢を検討せずに、安直にバイトしようというのはとてももったいないので、是非バイトするときには、これでよいのか? もっと有意義なバイトはないか? バイトしなくても他に活動できないか? など自問自答してみてください。
東大を使い倒せ
東大は数多くの溢れるばかりの学ぶ機会を提供してくれています。ただ情報が膨大ということもあり、残念ながらアンテナをはって、主体的に情報を取りに行かないとその恩恵にあずれません。私自身、教員になってからこんなに学ぶ機会があったんだ、もっと大学のリソースを活用しておけばよかったと後悔しています(もちろん最近作られた学習機会も多くあるのですが)。せっかく東大に入ったあなたには、是非東大を使い倒してもらいたいと思っています。そこで、使いこなし方の例をいくつか紹介します。
大学が提供するプログラム・授業に参加する
大学が提供しているプログラム・授業は多様なものがあり、それに参加することでも学びを得られます。例えば、ということで、大学提供のプログラム・授業をほんの一部にはなりますが紹介します。
- 体験活動プログラム(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/students/special-activities/h19.html)
- これは「東京大学の学部学生及び大学院学生が今までの生活と異なる文化・価値観に触れるプログラム」であり、「国内外問わず実施され、ボランティアなど社会貢献活動、国際交流、農林水産業や地域体験、学内研究室体験など、多様なプログラムで構成されています」(括弧内は上記ホームページより。参照日: 2022年4月1日)。
- ボランティア活動もあれば、就労体験もできたり、プログラムによっては海外で学ぶ機会が提供されています。このような機会を自分で直接交渉して作り出すこともできますが、なかなか時間と手間がかかることで、ここまで準備されて体験できる環境はなかなかないので、おすすめのプログラムの一つです。
- Spring Founders Program(https://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/activity/venture/sfp.html)
- このプログラムは、有志の学生チームで応募できるもので、技術プロジェクトや製品開発の支援をしてくれます。具体的には、活動場所の提供、相談会の実施などをしてくれることに加えて、活動資金も提供してくれるようなプログラムです。起業する前に色々と試すような場として活用することができます。
- 選考があるため、ある程度の準備が必要ですが、何か友人と一緒にプロジェクトを進めたい、他のチームと交流したいなどあれば、とてもおすすめです。たとえここで失敗したとしても基本的に何も残らないだけなので、リスクが少なくチャレンジできる環境が整っています。学生のうちであれば特に失敗しても問題ないので、是非このようなプログラムを活用して色々とチャレンジしてもらいたいです。
- 100 プログラム(https://100.todaitotexas.com/)
- 上記のプログラムはチームを作らないといけない点でハードルが高いのですが、「100 プログラムは『何かつくってみたいけど、アイデア・技術・チームの3要素のいずれか(または全て)が無い』という学生を支援するプログラムです」(上記ホームページより。参照日: 2022年4月1日)。
- 週20時間のコミットを求められますが、仲間がほしい、アイデアがほしい、技術がほしい人にはとてもよい機会になるかと思います。
- FLY Program(https://www.fly.c.u-tokyo.ac.jp/)
- これは更に尖ったプログラムで、「入学した直後の学部学生が、自ら申請して1年間の特別休学期間を取得したうえで、自らの選択に基づき、東京大学以外の場において、ボランティア活動や就業体験活動、国際交流活動など、長期間にわたる社会体験活動を行い、そのことを通じて自らを成長させる、自己教育のための仕組みです」(上記ホームページより。参照日: 2022年4月1日)。
- 1年間の休学期間を設けて、そこで海外でボランティアをしたり、市役所でインターンをしたりと短期間では得られない学びを得ることができます。また、休学期間中は学費が0で、最大50万円の活動資金も提供されるプログラムです。社会人になると1年間まとまった時間をとることはかなり難しくなってくるので、学生の間だからこそできる時間の使い方だと感じます。ただ、ハードルは高いと思うので、こんなプログラムもあるんだ程度に頭の片隅に置いておくのもありです。
- 東京大学アントレプレナーシップ・サマー・ブートキャンプ(全学体験ゼミナール。UTAS 参照)
- 学部1・2年生を対象としたアントレプレナーシップ教育の短期集中プログラム(ブートキャンプ)で、起業に関わった教員や起業家から話を聞いたり、企業の人と話したり、自分たちで解決したい課題を見出したりと、短期間ですが実りの多い授業です。実は私も運営に関わっているのですが、この授業をきっかけに「行動が全てに勝る」(Action Trumps Everything)という言葉の重要性を感じて、心に火がついて色々と活動しています(笑)
- 授業でもこのような機会が設けられており、他に様々な授業が提供されています。そのため、シラバスに載っている授業を色々と確認して、興味を持ったら是非積極的に受講してみてください。
これ以外にも多くの機会が提供されていますので、是非自分でも調べて興味があるものに参加してみてください。また、私が知っている範囲で有用そうなリンクは以下に載せておきますが、もし他にも有用な情報があれば、コメント欄を開放していますので、書いてもらえると嬉しいです。
- 参考情報
- 東大公式 HP(様々な教育プログラムが載っています)
- アントレプレナーシップ関連
- 産学協創推進本部 HP(実践的なプログラムが多く載っています)
- アントレプレナーシップ教育デザイン寄付講座(授業を提供しています)
大学教員と関わる
せっかく大学に入ったのならば、大学教員に関わるのがおすすめです。普通の高校の気分で大学に来ると、教員と接するのは授業だけと思ってしまうことがありますが、実はそんなことはありません。例えば、
- 授業をきっかけに教員に連絡をとってみる
- 研究室のゼミ・イベント・プロジェクトに参加してみる(前述)
- 研究室のインターンに応募してみる(前述)
- 間接的ですが、研究室に入っている先輩に話を聞いてみる
ということをきっかけに大学教員と関わることができるかもしれません。第一線で活躍されている教員と関われるのは学生の特権でもありますので、是非その特権を活用してもらえればと思います。
ただし、先生もお忙しい方が多いので、事前にちゃんとその先生や研究について調べて、何を話したいのか、何を聞きたいのかを明確にした上で、丁寧にメールなど連絡することをおすすめします。
おわりに
色々と書いてしまいましたが、伝えたいことは「とにかく大学4年間を充実させて有意義に過ごしてほしい!」ということです。学生の頃はなかなか気づかないのですが、本当に自分がしたいことをできる貴重な時間が多くあります。自分自身、ダラダラと過ごさずにもっと有意義なことをすればよかったと思っているので思いを伝えてみました(ダラダラと過ごそうと思えば過ごせてしまうんですよね。そこが恐ろしいところです)。
それでは良い大学生活を!
おまけ
ちなみに私の研究室では、より良い教育を実現することを目的に教育工学の研究・活動を行っています。また、授業(https://edulab.t.u-tokyo.ac.jp/teaching/)も提供していますので、ご興味があれば是非!
謝辞
本記事を確認して助言をしてくれた吉田紗江さん、中條麟太郎さん、本当にありがとうございました!