アウトライン思考法 文章作成編 実例 ダージリンの紹介

2021年8月16日に実施したワークショップ(記事)の中で,学生が作ってくれたアウトラインを対話をしながら改善することで得られる知見が多かったので,ここで紹介したいと思います.

文章作成のテーマとアウトライン案

文章作成のテーマは「自分の好きなもの」で,相手に自分の好きなものを伝える文章を作ってみよう,というものでした.学生 A さんが選んだのは「ダージリン」で,ダージリンについてあまり知らない人に興味持ってほしい,ということでした.そして,出てきた暫定的なアウトラインは以下のものでした(ワークの時間設定が長くはなかったので未完成であること,改善の余地があること,念のためお伝えしておきます).

また,この後アウトラインの改善をしていくので,是非アウトラインを見ながらどの点が改善できそうかを考えてみましょう.そうすることで,アウトライン改善案に対する理解も深まるかと思います.

  • ダージリンとは
    • ダージリンそのものの説明
  • ダージリンを味わう楽しみ
    • 紅茶の中で,一番複雑.
      • 時期によって味わいが違う
      • 農園・ロット(生産単位)ごとに味が異なる
      • 年によって違う
  • 複雑さの紹介
    • 時期
      • 大まかに,3種類ある
        • ファーストフラッシュ(春摘み)
        • セカンドフラッシュ(夏摘み)
        • オータムナル(秋摘み)
      • それぞれの特徴
        • 以下を参照に説明したい.
          • 香り
        • 具体的に
          • ファーストフラッシュ
            • 緑茶みたいな味.フレッシュな甘みがある.
            • 香りは,
          • セカンドフラッシュ
          • オータムナル
  • ダージリンをぜひ飲んで欲しい
    • 時期だけでなく,同じ時期でも,農園・ロット,年によっても違い,複雑で,楽しみ甲斐がある.
    • 特に,実際にファーストフラッシュとセカンドフラッシュは

アウトラインの改善

上記のアウトラインを見ても,もちろんダージリンについて興味がわくのですが,もっと伝わりやすいアウトラインがあるように思えました.アウトラインを見て思ったことは以下のとおりです.

  • 「ダージリンとは」と「ダージリンを味わう楽しみ」の部分はスラスラと読めてこの構成で良さそう
  • 「複雑さの紹介」が少々読みにくく感じる.「複雑さの紹介」では,3種類のダージリンを紹介していて,さらにそれぞれの味と香りに要素を分解して説明しようとしているところで,アウトラインの要素が多くなっている点,複雑になっている点に違和感がある

そこで,学生 A さんに「複雑さの紹介」の部分では何を伝えたいのか聞いたところ,ダージリンを味わう楽しみの一種の具体例として情報提供したいということでした.そこで,気付いたことがありました.上記の「複雑さの紹介」のアウトラインは,情報を体系的に説明してくれようとしているのですが,楽しみの具体例の一つとして紹介したい場合はもっと構造をシンプルにできるのでは? ということです.そこで,吉田が提案した「複雑さの紹介」部分のアウトラインが以下のものです.

  • 複雑さの紹介の例 時期
    • 時期によって全く味違う
      • 具体例
        • ファーストフラッシュ(春摘み)
          • フレッシュな甘みがある.香り…
        • セカンドフラッシュ(夏摘み)
          • 味,香り…
        • オータムナル(秋摘み)
          • 味,香り

こうすることで,アウトラインの要素を絞ること,メッセージの明確化を狙いました.改善案を提案する際に考えたことは以下のことです.

  • ダージリンの時期による違いを体系的な情報を提示して説明しようとしていますが,今回の目的を考えると,ダージリンの時期に関する体系的な情報の提示というよりも,興味を持ってもらうための文章なので,何かしらの主張が上位の要素に来たほうが良いのではないか
  • 「ファーストフラッシュ」や「セカンドフラッシュ」などは,「時期によって全く味が違う」という主張をサポートするための具体例なので,「時期によって全く味が違う」の子要素として,具体の事例を提示したらどうか

この改善案は学生 A さんにも受け入れられ,他の参加していた学生にも受け入れられているようでした.

今回の学び

アウトラインを作る際,アウトライン自体の見た目が構造的なため,情報を体系的に構造的に列挙したくなるのですが,あるメッセージを伝えたいときは,体系的に情報を列挙するよりも,主張をベースにアウトラインを構成する方が良い,というものが今回の大きな学びです.

もちろん,取扱説明書など体系的に情報を提示する必要がある場合もあるので,体系的な情報を列挙すること自体をやめましょうと言っているわけではありません.アウトラインを作る目的を考えて(体系的な情報を提示したいのか? ある思いを伝えたいのか?),体系的な情報提示を軸にアウトラインを作るのか,主張を軸にアウトラインを作るのかを判断してもらえればと思います.学生 A さん意義ある気付きをありがとうございました!